せんだいメディアテーク
2004.2.27-3.4
2003年に逝去したアメリカの実験映像作家スタン・ブラッケージの初期の作品か
ら最晩年のものまで日本初公開作品をふくむ90作品あまりを上映する日本では初
となる大規模な回顧展。私は代表作である「DOG STAR MAN」など、数点のビデオ
で作品を観ているが、もちろん、スクリーンで観るのは初めてです。ともかく、
膨大な作品を発表してきた作家ですので、 90作品というのもその一部かもしれ
ませんが、さらに、私は仕事の都合で、会期はじめにして、もう、これ以上観る
ことができないという。半端ながらも、チェックできた限りで紹介します。
スタン・ブラッケージ(Stan Brakhage)は2003年3月癌により死去(享年70
歳)。その手法も時代によって様々でフィルムに直接絵を描いたりする独自の方
法や多重露出など。しかし、初期の一部の作品をのぞき、一貫して作品はサイレ
ントである。しかしその作品のいくつかは音楽的なタイトルを持ち,またその作
品を見る者は,彼の映像から"音楽"が聞こえると言う。
さて、今回チェックできたのは「SONG SERIES」、「DOG STAR MAN」そして日本
の映像作家達によるトリビュート作品「リスポンド・ダンス・フィルム」。ブ
ラッケージの作品はビデオを観た時も感じたのだけれども、「詩(私)的な光」
である。今回観た2作品はどちらともが多重露出によってごちゃ混ぜになった映
像と、フイルム自体を削ったり、ペイントすることによってとても抽象的な映像
になっている。また、その1つ1つの要素のディティールに注目していると、全
体を見失ってしまう。だが、なぜか、その混沌とした映像全体を観ていると、意
外にも(ブラッケージの意図するものだろうか)作品の訴えらしきものが視えて
くる。
また違う角度から観てみると、カメラのぶれ、揺れ、ピントのずれと、カットの
切り替えがリズミックで、確かに、”音楽”的構造を持っているように思われ
る。実際、私は観ていて、幻聴のような音が聞こえた・・・サイレントのはずな
のに、おもいっきりサラウンドなやつを。(疲れてるのかな??)もしかした
ら、ブラッケージの作品の映像が脳内で音としてミスジャッジして聞こえるよう
に命令した??なんて思ってしまいます。
ともかく、必要以上のクローズアップによりほとんどが何をとったか解らない映
像、さらにサイレントであるということが、より映像へ集中していく。これはト
リビュート作品で思ったことだが、音や音楽のある作品はカットごとの多重露出
にうつし込まれた映像への集中が阻害されている様に思われた。音楽に引っ張ら
れて映像は置き去りとまではいかないが、サイレントほど自分に入ってこない。
新たな発見だった。
最後に、こういった映像と音楽の関係を探っていこうというプロジェクトが web
上で行われている。 Visual music for the silent film makerと題され、 mp3
形式でブラッケージへのトリビュート音楽/音響作品を公募しているので、作品
を観たら映像を音楽にしてみたらどうだろうか。
せんだいメディアテーク
http://www.smt.jp/brakhage/
ブラッケージ・アイズ 2003-2004
http://www.brakhage-eyes.com/
Visual music for silent film maker
http://www.visualmusic-for-sfm.net/_ja.html