2004年03月28日

マクシム・デュ・カン展 「150年目の旅」(15号 15.6.01)

6月8日(金)〜7月4日(水) せんだいメディアテーク 6階ギャラリー4200

日頃私はロシア製のLOMOという小さいカメラを持ち歩き、なんでもないも のを撮ったりするし、何かのイベントの時はデジカメも撮ったりするので すが、いまや、手軽にあらゆる場所で行われるこの行為も、150年前となる とどうだったのでしょうか。この写真展は旅を写真に収めるという行為を きっと、最初に始めた写真を展示したものとなるでしょうか、1849年に出 発した旅の記憶である。

と、今回行ったイベントはMAXとの関連がかすりもしない写真展である。し かし、演奏を聴いたり、風景の中の音を聴いたりすることで、アイディア が浮かんだりすることがあるように、絵画や、写真からそういったものを 受けることもあると思います。ただし、今回の写真はアーティスティック な表現のために撮られたものではないし、どちらかというと、記録写真に 近いんだと思います。しかし、記録とて、写真機がまだそんなに知られた ものではなく、もちろん、旅行に持っていこうとなど考えつかなかった15 0年前に、それを携帯したという事実には何かしらの「表現したい」が潜ん でいるのではないでしょうか。そのように考え、「写真を撮る」という行 為に気をつけて観ていくことにしました。

展示されていたのは125点で写真集「エジプト・ヌビア・パレスチナ・シリ ア」の作品がすべて網羅されています。大きさは思ったよりも大きくなく、 しかし、それぞれの写真の質感ははっきりとわかるくらいの大きさで、はっ きりした輪郭と、黒い影が、あたかも、リトグラフのように見えました。 それと、150年以上前の写真とは思えない遺構の表面の質感や、鮮明な椰子 の葉、専門的な作品の注釈(もちろん本人のオリジナルのままです)、そし て、今となってはまるで観光地で売っている絵はがきのような完璧に凡庸 な構図。というか、これは本末転倒ですね、これらの作品の影響は現在も いろいろなところに潜んでいるということだろう。

さて、これらの写真は、そのほとんどが遺構を撮っているものが多い。それ はエジプト文明の時代から、ローマに至るまで。そこで写っているものは、 破壊された廃墟、略奪され、切り取られた、あるものは型を取るための石膏 がこびりついている。そう、これらには略奪された歴史を切り取っているに すぎないのである。すべてがそうではないが、ローマ時代から、近代に至る 略奪の歴史を語っているにすぎないのである。そして、それ以上を語ること がない。決して、デュ・カンは登場しない。被写体としても、作者としても。 ただ、とられている、ありのままの遺構。それが、観たものに感じるすべて であるにちがいない。もし、それ以外にあるならば、遠く離れた異国への憧 れでしかない。遙か昔からそこにたたずんでいる歴史の残像でしかないので ある。

言うならば、もっともニュートラルな作品である。

しかし、「旅の記録を写真を撮る」という行為自体は、それ自体はとてもニ ュートラルとは言いがたい。行為が先鋭でありながら、その作品は凡庸さが にじみ出ている。もちろん、歴史的な価値をのぞいての話だが。どうして、 こんなふうになってしまったのだろうか?ふと思ったのだが、これをカタロ グとしてみなせば、確かに優秀なものだろうと。説明のための写真。細部ま で、実物を見るが如しの心地。うーむ、それだけではないようにも思うのだ が、果たして、後に、さまざまな写真家がやはり、同じ場所を写したに違い ないのだが、もしかしたら、デュ・カンの写真を見てその場所を見つけてい たとしたら、それならば、デュ・カンの写真が凡庸でありながら、どこか気 になるとしたら、それはメタレベルの繰り返しによる、勘違いなのだろうか? 150年間の蓄積の幻をも見ているのだろうか?

どうも、気になる凡庸さである。

それは凡庸な自分のシンパシーによるところなのかもしれないが、どこか、 いとおしく感じてしまう。
いきなり、話が飛躍するが、楽器の奏法の知的所有権はないんだそうで、 (真偽のほどは知りませんが、何かの際に聞いた話です)演奏の仕方まねし ても、いまのところ、責められることがないそうで、意外な感じ。作曲と演 奏って両輪のような感じがしたのですが。
やったもの勝ちと言うが、本当は、やったものをうまくまねたもの勝ちなの かもしれない。

「手法は手段でしかない、目的ではない」、なんて、いえない。

もしかしたら、デュ・カンの写真は凡庸なのではなく凡庸にされたのかな? なんて、思ったりして。(やっと戻ってきました) ・・・結局、何いようとしてるんだ、>自分。というところで、いろいろ考 えながら、次回は6月9日、10日に仙台で行われた唐組の公園(いやいや、公 演)についてお送りしようかと思ってます、あかてんとー!

せんだいメディアテークのHP: http://www.smt.city.sendai.jp/

Posted by com4jai at 2004年03月28日 23:29
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